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「金米堂」さん

 

横浜市で一番古いお寺といえば、弘明寺(ぐみょうじ)ですが、その門前町、弘明寺商店街は和菓子激戦地区です。

 

200メートルの範囲内に上生菓子を扱う店が3軒もあるのです。 「盛光堂総本舗」さんと「江戸家」さん、そして「金米堂」さんです。

 

この中で一番歴史があるのが「金米堂(きんぺいどう)」さんで、1897(明治30)年に創業しています。

 

 

上生菓子の種類の多さ、完成度の高さにおいても金米堂さんが群を抜いていて、定期的に訪れるお気に入りのお店でした。

 

「でした」と、過去形になっているのは、残念ながら現在は閉店してしまっているからなのです。

 

当図鑑で時折登場する横浜市中区石川町の「金米堂本店」さんから暖簾分けで創業し、三代続いていましたが、2016年5月末で店じまいされました。

 

弘明寺商店街は昭和31年には当時、東洋一の長さと謳われたほどのアーケードを設置した活気に満ちた商店街でした。

 

しかし、最近では後継者不足から、シャッターが下りたままになっている店舗が徐々に増え、金米堂さんもその一つとなってしまいました。

 

田舎の和菓子屋さんという素朴な雰囲気が好きで、よく足を運んでいましたが、本当に残念です。

 

 

今日は、金米堂さんを偲んで、思い出の逸品を10作品厳選してお届けします。

 

 

「若竹(わかたけ)」羊羹製:金米堂 

緑色に染めた円柱状の煉切を抹茶羊羹の中に沈め、羊羹製の竹の葉を添えたお菓子です。

 

 

「水仙(すいせん)」浮島製:金米堂

求肥入りの小倉餡を緑と茶色の二色の浮島ではさみ、煉切製の水仙花を添えたお菓子です。

 

 

「兜(かぶと)」煉切製:金米堂 

小豆煉切で兜の形をかたどり、黄色い煉切製の三日月を配したお菓子です。

 

 

「花菖蒲(はなしょうぶ)」煉切製:金米堂本店

紫と白、黄色に染め分けた煉切で小豆こし餡を包み、手技で花菖蒲をかたどったお菓子です。

 

 

「紫陽花(あじさい)」淡雪羹製:金米堂 

泡雪羹の中に、紅、紫、緑の羊羹の断片を入れ固めたものです。紫陽花のイメージを抽象的に表現した佳作です。

 

 

「檸檬の錦玉(れもんのきんぎょく)」錦玉製:金米堂 

透明な錦玉の中に、レモンの薄い輪切りを封じ込めた爽やかなお菓子です。 

 

 

「月うさぎ(つきうさぎ)」求肥製:金米堂 

柚子味の白こし餡を求肥で包み、うさぎをかたどったお月見用のお菓子です。 

 

 

「富貴(ふうき)」煉切製:金米堂

黄色に染めた煉切を、小田巻という道具を使い麺状に加工したもので、小豆こし餡を包み、緑の煉切製の葉を添えたお菓子です。

 

 

「小雪南天(こゆきなんてん)」きんとん製:金米堂 

緑色と白の二色のそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、南天の実に見立てた羊羹製の赤い玉を付け、煉切製の葉を添えたお菓子です。

 

 

「ワンちゃん(わんちゃん)」:金米堂 

一文字鍋に中花種を楕円形に流して焼き、小豆こし餡をのせて二つ折りにし、犬の顔に形づくって目鼻口などを焼印で押したお菓子です。 

 

 

 

金米堂さんに通ったのは2年余りという短い期間でしたが、このような名品の数々に出会うことができ、幸運でした。

 

忘れえぬ和菓子屋さんとして、私の心の中でいつまでも輝きを放っています。