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青楓(こまき)

 

待ちに待った休日です。

 

朝から雲ひとつない快晴!と言いたいところですが、よく見ると、東の空に置き忘れられたような雲がふたつ。

 

でも、晴れには変わりありません。天気が良いと、少し遠出をしたくなります。

 

 

今日は、北鎌倉へ新緑を見に行くことにしました。

 

そして、北鎌倉と言えば、もちろん「こまき」さんの上生菓子もお目当てです。

 

 

 

北鎌倉駅から徒歩20秒の円覚寺。予想通り、青楓が満開です。

 

平日の午前中なので人もまばらで、撮影には持ってこいです。土日ではこうはいきません。どこかここかに人が写り込んでしまい、”作品”というより、”スナップ写真”になってしまうのです。

 

 

 

三門に通じる階段も独り占め。

 

両側は青楓の群衆で埋め尽くされ、「サインお願いします!」「握手してください」と言わんばかりに、柵を乗り越え、腕を伸ばしてきています。レッドカーペットを歩くスターになった気分です。

 

 

 

頭上には緑色に輝くシャンデリア。青葉を抜けてくるまばゆいほどのスポットライトで、全身が青く染まってしまいそうです。

 

見上げながら夢中でシャッターをきっていたら、一段踏み外してしまい、妄想から一気に現実に引き戻されてしまいました。

 

 

はやる気持ちを抑えきれず、撮影もそこそこに、早速、菓匠「こまき」さんに向かうことにしました。

 

こまきさんが作る上生菓子は、お茶席用の受注状況によっては数種類用意されている時もあるそうですが、原則1日1種類のみ。 季節に合わせ入れ替わり、同じ意匠が1ヶ月続く時もあれば、1日限定の時もあるという神出鬼没なラインアップです。

 

また、ご主人の強いこだわりで、注文を受けてからその場で作ってくれるというスペシャルな方式に、なおさら期待が高まります。

 

 

入り口を入ってすぐ左手の壁に小さなディスプレイがしつらえてあり、そこに今日のお菓子が展示されてます。

 

今日はなんとタイミングよく「青楓」ではないですか!

 

持ち帰りは6個からなので、最少単位で注文しました。お菓子が出来上がるのを待つ時間がこれまた良い。奥の工房からカタン、コトンと聞こえてくる木型を扱う音が心地よいのです。

 

 

 

菓子箱には、経木(きょうぎ)といって、スギやヒノキなどの木を紙のように薄く削ったものが敷かれ、お菓子の上のカバーにもなっています。

 

木とは思えないほど薄く、かすかに透けて中のお菓子の輪郭が見えます。

 

自然の木の香りが和菓子をやさしく包み込み、家に持ち帰って開封したとき、プラスチックケース入りのものと比べ、明らかに風味が異なります。 

 

 

 

やさしい若緑色のお菓子が箱の中できちんと整列しています。

 

 

今日、円覚寺でみた青楓をイメージしながら盛り付けてみました。

 

「青楓(あおかえで)」煉切製:こまき

緑色に染めた煉切で小豆こし餡を包み、楓をかたどった木型にて押し抜いたお菓子です。

 

放射状に伸びる葉脈が凛々しく端正に浮かび上がっています。

 

 

 

しっとりしているのに、べたつかず餡の切れが良い。型崩れなくかっちり押し抜かれているのに、ふんわりしなやかという、作り立てならではの特別な食感。

 

良質の素材が最大限に生かされた上品な味わいに、もう一個、もう一個と、思わず手が伸びてしまい、お菓子の青楓は早々に散ってしまいました。