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歌舞伎×和菓子(2)「源 義経」

 

味の素が推し進めるプロジェクト《AGF®「煎」WAGASHI-INNOVATION(ワガシイノベーション)》の一環として、歌舞伎をテーマにした創作和菓子のコンテストが開かれました。

 

グランプリを受賞したのは、榮太樓總本鋪の和菓子職人・青木誠治氏で、この道35年という大ベテランの方です。 

 

グランプリ作品4点のうちの1点目は昨日紹介しました。今日は2点目をお届けします。 

 

今回のプロジェクトは、歌舞伎十八番の内の『勧進帳』がテーマとなっていますので、より深くお菓子を理解するためには、まずこのストーリーを知る必要がありますね。 

 

でも心配ご無用です。ご丁寧に、お菓子にはちゃんとパンフレットが添えられていて、あらすじがわかるようになっています。 

 

 

1分で勧進帳が理解できるように、さらにコンパクトにまとめてみました。 

 

 

鎌倉幕府将軍である兄・源頼朝と不仲になり、追われる身となった義経。 

奥州藤原家を頼りに、陸奥へ逃れようと、弁慶を初めとする家来を連れて加賀の国安宅の関に差し掛かる。 

義経は強力(ごうりき:荷物持ち)に、家来たちは山伏に変装している。 

関守の富樫左衛門には義経たちを捕らえるよう命令が下されていた。 

弁慶は機転を利かせ、焼失した東大寺を再建するため勧進(寄付集め)を行っているのだと話す。 

富樫は、弁慶に「勧進帳」を読むよう命じる。 

勧進帳など持っていない弁慶は、別の巻物を開くと、それを本物と見せかけて朗々と読み上げる。 

一行は山伏を演じきり、関所を通る許しを得る。 

しかし、ふとしたことから強力が義経ではないかと疑われてしまう。 

弁慶は義経を金剛棒で打ち据え、疑いあらば殺して見せましょうと言う。 

それを見た富樫は、頼朝の命を破り、一行が通ることを許す。 

弁慶は義経に泣いて詫びるが、義経はじめ家来一同、弁慶の機転をほめる。 

そこへ再び富樫が登場し、先ほどの非礼を詫び、杯を交わす。 

公的な場である関所では、義経と知って対することは出来ないが、私的な立場で一行との別れを惜しむ。 

弁慶が「延年の舞」を舞って感謝を表す。 

その間に義経たちは先に出発し、最後に弁慶が「飛び六方」で彼らの後を追う。 

 

 

弁慶・義経・富樫の主要登場人物の中から、源義経を描いたお菓子が今日の逸品です。 

 

 

「源 義経(みなもとのよしつね)」きんとん製:榮太樓總本鋪 

 

安宅の関所で、義経と気付かれないようじっと身をひそめる義経を表現しています。 

 

義経の衣装に見立てた紫色のそぼろを小豆こし餡のまわりに植え付けます。その上に煉切製の笠をのせ、焼そぼろに羊羹をつけた金剛杖を脇に立てかけています。また、背面には、黒雪平のしに羊羹を張って表現した荷物を担いでいます。

 

 

パンフレットの挿絵と比べてみると、絶妙に単純化、抽象化されていて、義経の雰囲気をうまく表現できているのがわかります。 

 

きんとんの美しい紫は、身分の高さを象徴するとともに、義経の高貴さや優美さをも伝えてくれるようですね。深くかぶった笠には、追われる身の儚さが表れています。