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黄菊(菊延舎)

「黄菊(きぎく)」煉切製:菊延舎 

黄色と白にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包みまるめ、手技(てわざ)で菊花をかたどったお菓子です。 

 

煉切製やこなし製の上生菓子は大きく分けて、竹べらや布巾などの小道具を利用して手づくり(手技:てわざ)で成形していく「手形もの」 と、いろいろな形に彫刻した木型を使って、押し抜いて作る「型抜き」があります。

 

「手形もの」は、ひとつひとつ手作りのため、絵画や書などと同様に、ひとつとして同じものはなく、つくり手の技術や個性がストレートに反映される製法です。 

 

それゆえ、熟練した職人さんの力量が見事に発揮される和菓子製造技術の華ともいわれるものです。 

 

菊をテーマにした上生菓子は、特に「手形もの」が多く、その意匠はバリエーションに富んでいます。 

 

ある職人さんは、煉切り餡を布巾で包み、ぎゅっとひねって、抽象的ではありますが想像力をかき立ててくれる菊をつくります。また、ある職人さんは、花びらひとつひとつまで表現したような、繊細な菊をつくります。どちらが正当ということではなく、この表現の差が個性なのです。 

 

同じ菊がテーマでも、店によってまったく違う趣き、違う味わいのものが用意されていますから、好みに合わせて選ぶことができます。 

 

いろいろな和菓子店を訪ね歩いて食べ比べするのもいいですし、一軒のなじみの店に通い続けて小さな発見を重ねていくことも、いずれ劣らぬ和菓子の楽しみ方ですね。