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菊の露(とらや)

「菊の露(きくのつゆ)」こなし製:とらや 

紅色に染めたこなしで白小豆こし餡を包みまるめ、へらで菊の花びらを一枚ずつ刻みます。さらに、白いみじん粉(寒梅粉)を五カ所に配し、菊花に結んだ露を写したお菓子です。 

 

棹菓子として正徳元年(1711)に初めて創作されたという、なんと300年以上も前に生まれた歴史的な逸品なんですね。

 

 

1月1日の元日、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕に次いで、今日、9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」です。 

 

と言っても、この節句、今ではほとんどすたれてしまい、無名のものになっていますが、「菊の節句」とも呼ばれ、菊に託して長寿を祈る日なのです。 

 

古代中国では菊は邪気を祓い長生きする効能があると信じられていました。その中国の影響を受けて平安時代の宮中では、この日に菊の花を浮かせた菊酒を飲んだり、菊に関する歌合わせや菊を鑑賞する宴が催されていたのです。 

 

その中でも特に興味深いのが、「着綿(きせわた)」という風習です。これは、重陽の前日の夜から一晩菊に綿をかぶせ、翌朝に菊の露や香りが染み込んだその綿で体を拭いて長寿をお祈りするというもので、和菓子のテーマとしてもよく用いられています。