· 

菊の御紋

 

外国人が日本をイメージするとき、まず思い浮かべる花は桜とならんで菊のようですが、それは菊が天皇家の紋章になっているためもあるでしょう。

 

この天皇家の菊の紋章の起源は、鎌倉時代、後鳥羽上皇がことのほか菊を好み、自らの印として愛用したのが始まりとされています。

 

日本の皇室の紋章は、正確には十六八重表菊というもので、十六枚の花びらの後ろに重なってもう一組十六枚の花びらがあり、前面の各花びらの間に後面の花びらの先端が見えるように配置されています。つまり三十二弁の菊になっているのです。

 

 

また、日本の旅券(パスポート)の表紙に表示されている紋章もこれに似ているが、こちらは十六一重表菊で、皇室のものが八重なのに対し、こちらは一重なのが違う点。

 

 

十六弁の八重菊を皇室の紋章とすることは明治2年に規定されています。さらに、明治4年には、この紋章を天皇家以外が使用することを禁止する規定ができ、終戦後まで固く守られていました。

 

今日紹介する上生菓子は、恐れ多くもこの十六弁の菊の意匠を使ったものです。

 

「菊花(きっか)」薯蕷製:福壽堂秀信 

正に天皇家の十六八重表菊の意匠です。

 

 

「御園菊(みそのぎく)」こなし製:鶴屋吉信 

御園とは御所のことですから、まさに高貴な十六弁の菊の花ということになります。花芯の部分は煉切製のそぼろでアレンジ。

 

 

「菊寿(きくことぶき)」こなし製:笹屋吉清 

こちらも天皇家の十六八重表菊の意匠です。

 

 

「野紺菊(のこんぎく)」煉切製:森八 

こちらはパスポートと同じ十六一重表菊の意匠になっています。