· 

小佐女菊(とらや)

「古佐女菊(こさめぎく)」こなし製:とらや 

紅色に染めた生地を華麗な菊のかたちに木型で打ち抜き、しっとり小雨にぬれた菊の花を表現。明治40年(1907)に初出の一品です。 

 

このお菓子、とらやさんの表記では「羊羹製」となっていて混乱しますが、一般に他店では「こなし」と呼ばれているものに相当します。

 

この生地は、餡に小麦粉・寒梅粉を混ぜて蒸し、揉み込んで作りますが、この製法が羊羹の原型である蒸羊羹から変化したことから、とらやさんでは独自に「羊羹製」という呼び方をしているそうです。

 

 

さて、日本語には雨に関する言葉がたくさんあります。

 

霧雨( きりさめ)・小糠雨(こぬかあめ)・小雨(こさめ)・時雨(しぐれ)・俄雨(にわかあめ)・村雨( むらさめ)・涙雨(なみだあめ)・天気雨(てんきあめ)・通り雨(とおりあめ)・大雨(おおあめ)・豪雨(ごうう)・雷雨(らいう) 

 

など、雨の強さや降り方によって、さまざまな表現があり、情緒に富んでいますね。

 

このうち、「小雨」は、平安時代の漢和辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』では「古佐女(こさめ)」の字があてられており、このお菓子の菓銘はこれに由来します。

 

雨の日は一般に歓迎されないものですが、「古佐女」などと風流な書き方をされると、雨の風情もまた趣があって悪くはないですね。