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大輪(豊島屋)

 

皇室の紋章や、日本の国花にもなっている菊、日本人にとって特別な花ですね。

 

和菓子の意匠としても人気で、この時季、各和菓子店からぞくぞくと、いろいろな菊のお菓子が生まれます。 

 

「大輪(たいりん)」こなし製:豊島屋 

薄紅色に染めたこなし生地で白こし餡を包みまるめ、はさみを用いて菊の細かい花びらを一枚ずつ切り出し、大輪の菊を写しています。 

 

いわゆる「はさみ菊」と呼ばれる、上生菓子の花形的な作品ですね。 

 

「はさみ菊」というのは、専用のはさみを使用して練切やこなし生地に菊の花びらを一枚一枚切っていくお菓子で、上生菓子の中でも高度な技術を要するものの一つです。 

 

使うはさみは、いわゆる裁縫用の握りばさみに似ていますが、先が細くとがっていて、まっすぐなものと、先がちょっと曲がっているものの二種類を使い分けます。 

 

和菓子技術の国家試験・1級技能検定の課題にもなっているそうで、試験では、花びら1周で24枚、それを8段にきれいに切ることを課せられます。 

 

花びらの数が1枚でも足りなければ減点ですし、次の段を切る時に、花びらと花びらの間に交互に綺麗に切れていないのも、減点対象になるそうです。 

 

中心の一番小さな花びらを揃えるところが最大の難所です。

 

頂上からはさみを入れていく上段切りと、裾(すそ)から切っていく下段切りがあります。このお菓子は下段切りです。 

 

職人さんが一片ずつ細かく慎重にハサミを入れる商品のため、大量生産はできませんが、和菓子の伝統技術を結集した、まさに最高傑作といえますね。