「光琳菊(こうりんぎく)」道明寺製:末富
小豆こし餡を、淡い紅色に染めたきめの細かな道明寺で包みまるめ、全体に氷餅をまぶします。さらに、中央部を少しくぼませて、そこに黄色く染めたこなし製の花芯を添えています。
ほんわかとした描線でシンプルに創られた形態は優雅で、少しユーモラスな味わいもある微笑ましい作品です。 氷餅がキラキラ光って、まるで朝露に濡れ輝く菊を写しているようですね。
”日本の美の特徴は「大胆な省略」だ” と唱える人がいますが、江戸時代の有名な画家「尾形光琳(おがたこうりん)」も省略の天才です。
有名なのは「光琳菊」と呼ばれる菊の図案。
〇(丸)の中に・(点)だけという極度に簡素化されたこの菊の文様は、屏風や工芸品にしばしば描かれ、また着物や上生菓子の意匠としてもよく使われています。
あまりにもシンプルで、菊だと言われないと何を描いているのかわからないですよね。
東京(江戸)のお菓子は細部までこだわった、写実的なものが多いですが、京菓子は、食べる人にいろいろ想像をさせるような、あえて主題をぼやかせて描く手法が多いようです。
「末富」さんも京都の名店ですが、やはりシンプルで抽象的な表現のお菓子が特徴です。
江戸菓子なら、葉っぱなどを添えるところですが、あえて空白を残し、その余白は食べ手に感じとってもらう。そんな作り手の粋な計らいがよく伝わってくる逸品です。