「乱菊(らんぎく)」煉切製:つ久し
桃色と白色にぼかし染めた煉切で餡を包み、さじ切りで曲線状の刻みを入れ、菊の花びらが踊り乱れるように咲いている様子を表現したお菓子です。
さじ切りというのは、さじ、つまりスプーンを使って生地に刻みを入れる方法で、スプーンのエッジを生地に差し込み、その曲線状の形をうまく生かして、ラインを刻み込んでいく手法です。
さじ切りは、動的な勢いのある曲線を描けるので、乱菊の表現にはもってこいの方法ですね。
さて、乱菊とは菊の品種の名前ではありません。
長い花びらが入り乱れて咲いている菊の花の様子を形容した言葉です。乱れ菊(みだれぎく)とも言います。
菊は、中国では不老長寿の効があるとされ、日本には奈良時代に渡来したと考えられています。
その高雅で気品のあるたたずまいは、日本でもとても好まれ、文様(もんよう)化されたものが数多くあります。その中でも乱菊文様は、菊の花の華やかさをより一層目立たせるために、大ぶりで伸びやかに表現されることが多いです。
この文様は家紋として使われたり、着物や漆工芸品などの題材としてもよく取り上げられています。
乱菊家紋 (出典:http://stencil.ocnk.net/)
着物の柄 (出典:http://kimono-bito.com/)
菊の花びらを大きく長く描いて、菊の花をさらに華やかに目立たせるために大胆に表わされています。