「主草(あるじぐさ)」こなし製:とらや
あらかじめ湿らせておいた木型の花芯の部分に黄の、葉の部分に緑のこなしを少量つけます。さらに白小豆こし餡をピンクのこなしで包み込んで丸め木型に入れ、菊を形づくったお菓子です。明治 40 年(1907)に初めて創作された意匠です。
花びらの筋模様一本一本、細かく枝分かれした葉脈、シベ(筒状花)の小さな粒々まで鮮明に再現された木型が実に見事です。
菊の種類はたいへん多く、色も形もさまざまなものがありますが、その異名の多さにも驚きます。
五十音順に挙げてみると、
いなて草
隠逸花(いんいつか)
陰君子(いんくんし)
翁草(おきなぐさ)
乙女草(おとめぐさ)
形見草(かたみぐさ)
河原蓬(かわらよもぎ)
草の主(くさのあるじ)
黄金草(こがねぐさ)
大般若(だいはんにゃ)
契草(ちぎりぐさ)
重陽花(ちょうようか)
千代見草(ちよみぐさ)
日精草(にっせいそう)
初見草(はつみぐさ)
星見草(ほしみぐさ)
優草/勝草(まさりぐさ)
鞠花(まりばな)
百世草/百夜草(ももよぐさ)
齢草(よわいぐさ)
など、そうと知らなければ、まさか菊のこととは思わない珍しい名前ばかりですね。
このお菓子の銘「主草」は、これら異称の中のひとつ「草の主」より名付けられたといわれています。
まさにその名に相応しい堂々とした風格のある逸品ですね。