いなて草
隠逸花(いんいつか)
陰君子(いんくんし)
翁草(おきなぐさ)
乙女草(おとめぐさ)
形見草(かたみぐさ)
河原蓬(かわらよもぎ)
草の主(くさのあるじ)
黄金草(こがねぐさ)
大般若(だいはんにゃ)
契草(ちぎりぐさ)
重陽花(ちょうようか)
千代見草(ちよみぐさ)
日精草(にっせいそう)
初見草(はつみぐさ)
星見草(ほしみぐさ)
優草/勝草(まさりぐさ)
鞠花(まりばな)
百世草/百夜草(ももよぐさ)
齢草(よわいぐさ)
ズラリといろいろな草花の名前が並びましたが、実はこれらはすべて同じ植物を指しています。何だかわかりますか?
正解は、「菊」です。
すべて菊の異称なのです!こんなにあるんですね。
この中からいくつかその由来を紹介しましょう。
例えば、菊は長い期間花を咲かせ、幾晩も咲いていることから、百夜草。夜に空に向かって凛と咲いている姿から星見草。他の草花がしぼんだ頃に咲き、世をのがれてひとり身を清くする隠士に似ているところから隠逸花。
このように、異名の呼び名には、物語性があって、とてもロマンチックです。
こんなにたくさんの呼び名があることからもわかるように、菊は日本人にとって昔から特別な花として愛されてきたんですね。
上生菓子の世界でも、菓銘を付ける際に、ストレートな「○○菊」という表現ではなく、少しひねって、風流で響きのよい異名が使われることも多いです。
「まさり草(まさりぐさ)」外郎製:鶴屋吉信
紫色と薄紫色に染め分けた外郎で小豆粒餡を包み、七枚の花弁の形に折りこんで、中央に薄黄色に染めた花芯を添え、菊花を表現しています。
まさり草は、「勝り草」とも「優り草」とも書き、菊の雅語(がご)のひとつです。寛平の菊合わせの歌に「すべらぎの 万代(よろづよ)までに まさりぐさ たまひし種を 植ゑし菊なり」と詠まれたところに由来します。
菊は気品のある秋の花の王様ですね。どんな花より勝り、優れているという思いがこめられた、素敵な名前です。