「はさみ菊(はさみぎく)」煉切製:栗山
ピンク色と白にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包みまるめ、はさみを用いて菊の花びらを切り出し、菊花を写したお菓子です。
このように、専用のはさみを使用して煉切やこなし生地に菊の花びらを一枚一枚刻んでいくお菓子を「はさみ菊」といいます。上生菓子の中でも高度な技術を要する花形的な逸品ですね。
頂上からはさみを入れていく上段切りと、裾(すそ)から切っていく下段切りがありますが、今日のお菓子は上段切りです。
作り方は、まず、頂上の中央に花芯の位置を決め、その円に沿ってはさみを入れていきます。
この部分が一番上段の花びらということになり、二段目以下の工程の位置の基準となるので重要な部分です。
今回は最上段で26枚の花びらを刻んでいます。
二段目からは上段の各花びらの間の位置にはさみを入れます。さらに三段目以降も同じ工程を繰り返します。
花びらの枚数はどの段も同じで、下に行くほど円周が長くなるため、下段になるほど花びらが大きくなります。
各段26枚の花びらが8段ありますから、花びらの総枚数は26枚×8段=208枚もあるということになります。
今までいろいろなはさみ菊を集めてきましたが、花びらの枚数としては、この栗山さんのものが最多ですね。
「はさみ菊(はさみぎく)」煉切製:みのや本店
上段切りで、花びらはかなり大きめ。花びらの総枚数は70枚。
「はさみ菊(はさみぎく)」煉切製:みのや本店
上段切りで、花びらの総枚数は70枚。
「大輪(たいりん)」こなし製:豊島屋
下段切り。上段切りよりも下段切りの方が難易度が高い。上段切りは最初にシベの位置(中心点)が決められるのに対し、下段切りは中心の目印がないので、軸がブレやすくなるそうです。
「菊(きく)」こなし製:豊島屋
下段切り。
「菊(きく)」煉切製:シベリア本舗
上段切りの応用編で、3つのシベを中心にして花びらを刻んでいきます。
「はさみ菊(はさみぎく)」煉切製:梅花亭
下段切り。
「はさみ菊(はさみぎく)」煉切製:梅花亭
下段切り。
「千代菊(ちよぎく)」煉切製:梅花亭
上段切り。花びらの総枚数は104枚。
職人さんが一片ずつ細かく慎重にはさみを入れる作品のため、大量生産はできませんが、伝統技術を結集した、まさに和菓子の最高傑作といえますね。