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こぼれ萩(両口屋是清)

こぼれ萩(こぼれはぎ)」葛製:両口屋是清 

白いんげん豆のこし餡を淡緑色に染めたもので、小豆こし餡を包み丸め、一番外側を葛で包み茶巾絞り仕立てにします。さらに、薄紅色に染めたみじん粉を散らし、葉の上にこぼれ落ちた萩の花を写しています。 

 

 

萩は、「草冠に秋」と書くように、古来、秋の代表とされ、秋の七草でも第一に数えられています。この「萩」という漢字は、日本で生まれた国字で、中国にはありません。 

 

万葉集の中でも萩を詠んだ歌は数多く、梅の百十九首を抑え、最多の百四十二首もあるそうです。 

 

日本人は、咲いている花だけでなく、散ってゆく花、枯れてゆく花など、終わりゆく花にも風情を感じ、それぞれの花の終焉の姿を、繊細な感性で描き分けています。 

 

例えば、桜は、「はらはら散る」とか「舞う」、山吹は「ほろほろ散る」、牡丹は「くずれる」、紫陽花は「朽ち果てる」、椿は「落ちる」「落ち椿」などと描写します。 

 

萩の花が散る様子は「こぼれる」「こぼれ萩」と表現し、菓銘としても多く見られます。 

 

ちなみに、梅も萩と同じで「こぼれる」「こぼれ梅」と表します。 

 

 

このお菓子、半透明の薄い葛生地を通して見える緑餡の色合いといい、葛の表面に刻まれた微細なしわの質感といい、また、何気なく散らしているみじん粉の絶妙な配置といい、その繊細な菓銘に負けないくらい、精緻に仕上がっていますね。