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夕凪(豊島屋)

「夕凪(ゆうなぎ)」羊羹製:豊島屋 

羊羹を固めるための金枠を斜めに立てかけて、まず小豆の練り羊羹を流し込み、固まりかけたら枠をまっすぐにして、白小豆の練り羊羹を流して固めます。こうすることで、長方形の対角線状に白黒二色に染め分けられた羊羹が完成します。

 

 

海岸地帯では、日中は陸地のほうが気温が高くなるため、海上から陸地に向かって風が吹きます。(海風) 

夜になると、その温度差が逆転し、陸地から海上へ風が吹くようになります。(陸風) 

 

しかし、陸と海の気温がちょうど同じになる夕方は、風がぴったっと止んでしまい、無風状態になります。この気象現象のことを夕凪といいます。 

 

四方を山に囲まれ、風の弱い瀬戸内海のような内海では夕凪の継続時間が長く、特に日差しの強い夏はこれがはっきりと現れます。 

 

このとき、海面はまったく風の無い状態となり、波もなく、まるで時間が止まったように、まっ平な鏡面のような幻想的な光景になるのです。 

 

夕凪という言葉は、耳に心地よく響き、美しいイメージですが、実際は、まったく無風のため、蒸し風呂に入っているような堪え難い暑さが続く現象なのです。 

 

 

このお菓子の黒い部分は夕暮に翳った陸地を、白い部分は風が止み鏡のように仄白く光る海面を写しているように見えます。 

 

あるいは、黒が陸風、白が海風で、両者の均衡がちょうど釣り合っている夕凪の状態を表しているのでしょうか? 

 

 

瀬戸の夕凪