· 

夏の野(とらや)

「夏の野(なつのの)」道明寺製:とらや 

瀬戸型に紅餡を入れ、道明寺羹を流したお菓子です。野に咲く百合の花が風に揺れ動くさまを表わしています。大正3年(1914) に初めて創作されたお菓子です。 

 

瀬戸型によってかたどられた、表面の繊細な百合のデザイン、ほのかに透けて見え隠れする紅餡の色あい、涼しげな半透明の道明寺羹の風合いなど、楽しみどころが満載のお菓子ですね! 

 

煉切などを型抜きしていろいろな形を作る際には、木型が使われますが、寒天など液状の材料を固めて特定の形を作る時には、瀬戸物でできた瀬戸型を使います。 

 

溶かした寒天に道明寺粉を混ぜた液状の道明寺羹を、瀬戸型に流し入れる時に、液面が斜めにならないように、水準器を使い正確に水平を確認して、瀬戸型を並べます。 

 

できあがった時に上から餡が透けて見え過ぎてしまわないよう、まず瀬戸型の7〜8分目まで道明寺羹を流します。

 

表面の固まり具合を確認し、頃合を見て紅餡をのせていきます。この際も、餡がちゃんと中央にくるように、細やかに調整します。 

 

餡が動かなくなるまで固まるのを待ち、固まったら、一定の重量に仕上がるように計量をしながら、残りの道明寺羹を流し入れます。 

 

一晩固めて、翌朝型から抜き、その日の店頭に並びます。 

 

このように手間隙かけて、ひとつずつ丁寧に手作りで作られた過程を知ると、お菓子を食べる時に、より一層味わい深いものになるでしょうね!