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天の川(甘春堂)

「天の川(あまのがわ)」錦玉製:甘春堂 

下から順に、小倉羹(おぐらかん)、白色のみじん羹、紅色と青の錦玉羹(きんぎょくかん)を斜めの層にして重ね、錦玉の中に無数の星屑に見立てたそぼろを散りばめた棹物です。 

 

みじん羹とは、味甚羹とも書き、みじん粉(餅米を蒸して乾燥させ挽いて煎ったもの)を錦玉に混ぜたもので、すりガラスのような質感になります。 

 

 

きらびやかな色を何層にも重ね、夜空に流れる銀河の清流をロマンチックに表現したお菓子ですね。 

 

色の配合や、寒天を斜めに何層にも重ねる技術が難しく、1日の生産量は200本が限界だそうで、さらに季節限定ということもあって、すぐに売り切れてしまう人気のお菓子です。 

 

夜空を写したお菓子は、小豆色や青色系の配色が多い中、甘春堂さんのは、まるで夕焼けのようなあたたかい紅色が中心になっているのが特徴です。 

 

赤の錦玉が織姫、青が彦星のイメージですが、織姫の視点に立ったお菓子なのでしょう。 

 

ところで、京都には甘春堂さんと、七條甘春堂さんという似た名前の和菓子屋さんがありますが、それぞれ兄弟で経営していて、元をたどれば同じなのですが、六代目の時に意見の違いから袂を分かち、弟さんが七代目を名乗って七條甘春堂を出店したそうです。 

 

現在は全く別のお店として、製造も販売も別々に行っていますが、「天の川」という同じ菓銘で意匠も非常によく似たお菓子をそれぞれで出していて、買い手としては複雑な気持ちになってしまいます。

 

織姫と彦星が渡るといわれる天の川に想いを馳せながら、しっとりいただきたいところですが、世知辛い現実に引き戻されてしまいましたね。