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蝶の谷戸(美鈴)

 

鎌倉の名店、「美鈴」さんの4月の棹物菓子をお届けします。

 

ここのお菓子には、ご主人直筆の菓銘と、鎌倉に所縁のある歌人、山崎方代(やまざきほうだい)の四季折々の歌が添えられています。 

 

 

「もろともに 聞きとむるべし とうとうと 樹木は春の 水あげてをる」(方代) 

 

樹木に耳を当てると、樹の中をとうとうと流れる水の音がきこえるという、脈打つ春の生命感や躍動感を感じる素敵な歌ですね。

 

 

渋い枯茶色の地に鈴の柄があしらわれた包装紙と、赤い紐でキリリと結ばれた美鈴さんのこの包みを見ただけで、気分が浮き立ちますね。

 

 

上品な和紙を貼り合わせた菓子箱の中に、美しいお菓子が丁寧に収められています。

 

 

三層構造になっていて、 一番下は小豆こし餡、真ん中はどら焼きの皮風に焼いた生地、一番上は若草色に染めたそぼろを敷き詰め、煉切製の蝶を一面に散らしたお菓子です。 

 

 

反対側から見ると、真ん中のどら焼き風生地の層がはっきり見えますね。 

 

せっかくの名品なので、もう少しじっくり眺めてからいただきたかったのですが、おなかが待ってくれなくて、早々に切り分けていただきました。 

 

「蝶の谷戸(ちょうのやと)」そぼろ製:美鈴 

 

ほろほろと舌の上で心地よくとろけるそぼろと、ふんわり・もっちり・しっとりした生地の食感、小豆の香り豊かなこし餡の素朴な甘みが、バランスよく見事に結集したお菓子です。 

 

谷戸とは、丘陵地が侵食されて形成された谷状の地形のことで、日照時間が短く、水はけが悪い場所のため開発を逃れ、生物たちの格好の住処になっています。 

 

陽春の頃、若々しい緑がまぶしい草むらの上を、無数の蝶が舞い戯れるのどかな風景が目に浮かぶようですね。