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「とらや&上生菓子図鑑コラボ上生菓子」完成!

 

130年前の和菓子の図案集を基に、木型を作成してオリジナルの和菓子を作るプロジェクトが着々と進行中です。 

 

記念すべき第1弾は「水に紅葉」(仮名)で、その進行状況を今までに何度か発表してきましたが、先日3月27日に、ついにお菓子が出来上がりました! 

 

本来なら昨年の秋に完成させたかったのですが、予想以上に時間がかかってしまい、紅葉がテーマにもかかわらず、若葉萌え出る春にようやくお目見えとなりました。 

 

事の発端は、4年前に古本屋街で偶然見つけた、この古めかしい高級和菓子図案画集に始まります。

 

 

当時は、上生菓子の写真を盛んに集め始めた頃で、とにかく手当たり次第にいろいろな和菓子店をまわり、新しい意匠のお菓子を見つけては買い漁っていました。 

 

そして、そのコレクションが今や3200種類を超え、集め尽くした感が漂い始めた頃、この図案集のことを思い出し、これを基にオリジナルデザインの上生菓子を作ることを思いついたのです。 

 

画集は全84ページあり、各項はびっしりと様々な図案で埋め尽くされており、その数100種類以上。

 

あまりにもたくさんあるので、ある程度絞り込むために、みなさんにご協力いただき人気投票を行いました。 

 

これが昨年2016年の11月のことで、その投票で人気の高かったものから優先的に木型を作成しました。 

 

その第一号となったのが、水紋に楓の葉や菊をデザインした次の図案です。

 

 

これを基に棹物菓子の規格に合わせ、一部分をカットし、再編集したものがこちらになります。 

 

 

これをベースに長野県の鈴木製作所に依頼して木型を作成しました。約3週間かかり12月末に木型が出来上がりました。 

 

 

木型作成に当たっては、完成図を反転させて彫る必要がありますが、発注の際の伝達ミスで反転しないまま製作されています。 

 

この木型を「とらや」さんに持ち込んで、オートクチュールでお菓子を作ってもらいました。

 

初回打ち合わせ ⇒ 試作品作成 ⇒ 確認・改良 ⇒ 最終完成品 

の流れで制作した訳ですが、3月は卒業や受験合格、入学、就職など記念となる行事が多く、とらやさんのオートクチュール和菓子のオーダーも大盛況で、結局その繁忙期が一段落してからの納品となりました。 

 

ではでは、お待たせいたしました。さっそく完成品をお披露目したいと思います!

 

 

今回は10棹オーダーしました。とらやさんのロゴが入った包装紙で、一箱一箱丁寧に包まれ、きりりと結ばれた紐にまで老舗の品格がみなぎっていますね。

 

 

包みを解くと、金箔を散らした和紙製の高級菓子箱が登場。

 

 

蓋を開けると、前後左右の四方向から白い和紙で丁寧に包まれています。 

 

 

じゃじゃ〜ん! 

 

 

ついに、完成しましたね〜。ここまで来るのに約四か月かかりましたが、夢中になって作っていましたので、今となってはあっという間。もう何も言うことはなく、ただただ感無量の一言ですね。 

 

色調が原画とはまったく異なりますが、とらやさんでは天然色素のみを使うため、発色に制限があり、きれいなブルーが出せないのです。

 

こちらが原材料名ですが、使用している色素は、クチナシとコチニールのみです。

 

 

使える色が限定的なことを逆手にとって、大胆に配色を変えてやってみたら、これが大成功。着物の裾模様のような華やかな雰囲気に仕上がり、大満足です。

 

 

小豆煉り羊羹を台にして、その上に木型で型押しした薄い煉切生地をのせた棹物菓子です。 

 

担当した和菓子職人さんに一番苦労した点を聞いてみました。

 

この木型は下司(げす)というお菓子の厚みを形成する木枠が付いていなかったため生地を押し付ける際に麺棒を使ったそうなんです。しかし、この方法だと力が真下にかからず、斜めになってしまうので、紅葉の部分の紅黄色の生地が輪郭からズレてしまったそうなんです。

 

試行錯誤の結果、ズレる距離を逆算し、わざとズレた位置に紅黄色生地をのせ、麵棒で押されて移動するとちょうど輪郭の位置にピタリとはまるように調整したそうです。 

 

あと、これも下司がないのが原因ですが、麺棒の圧力だけでは圧が不足で、木型から生地が綺麗にはがれないという問題もあり、これは木型に片栗粉をまぶすことで解決したそうです。 

 

こういう苦労話を聞くと、ますますこのお菓子に対する愛着が湧いてきますね。 

 

 

さて、ここで、原画、木型、お菓子の三つを並べて、どのような変遷をたどってお菓子が完成したか、まとめて見てみましょう。

 

その際、比較しやすいように、原画と木型を図形反転ソフトを使って反転させ、お菓子と同じ向きにしました。

 

 

いかがですか?色合いは別にして、形に関しては、ほぼ原画通りに見事に再現されていますよね。 

 

では、そろそろ切り分けて、実際に味わってみましょう。 

 

 

羊羹に定評のあるとらやさんですから、さすがに味の方も抜群でした。

 

存在感ある小豆の風味が特徴の、ねっとり濃厚な羊羹はいったん食べ始めると止まらなくなってしまいます。このお菓子は6×12cmほどもある大きさですが、一個丸ごといっぺんに食べてしまいました。 

 

創業450年以上、室町時代から続く老舗中の老舗で、自分だけのオリジナルのお菓子を創ってもらえるとは、なんて粋なサービスでしょう。 

 

さてさて、最後に銘を付ける楽しみが残っています。 

 

・そのままズバリ「水に紅葉」「水もみじ」「もみじ川」「水辺の錦」「水紋」「渦もみじ」 

 

・渦巻く渓谷や渓流をイメージして「渓谷の秋」「秋の渓流」「谷川の錦」 

 

・水音に注目して「秋のせせらぎ」「紅葉しぶき」「秋の水音」 

 

・川面を流れる紅葉をイメージして「水の旅人」「紅葉筏」「もみじの川下り」「流れ紅葉」 

 

・製法から「もみじ羊羹」「渦羊羹」

 

などなど、いろいろ候補が上がりましたが、最終的にこちらで落ち着きました。