今年一年かけて追っかけをしようと決めている「いづみや」さんの雛祭りの上生菓子です。
「おひなさま(女雛)」煉切・雪平製:いづみや
まず衣装ですが、表は純白の雪平製、裏地はシート状の羊羹製で、女雛はピンク色、男雛は緑色に色分けされています。
この雪平生地がとても粘着力が強く、容器から取り出すときに底にくっついて、ビロ〜〜ンと伸びてしまい慌てました。女雛の衣の裾が少し乱れているのはそのせいです。
「おひなさま(男雛)」煉切・雪平製:いづみや
雛人形の定番の小道具として、女雛は扇を持ち、男雛は笏(しゃく)を手にしています。
本体は、どちらも白の煉切で餡を包んで丸めたものですが、中の餡に一工夫あり、女雛はいちご餡、男雛は抹茶餡になっています。
最初に断面を見たときに、赤餡は梅餡、緑餡はよもぎ餡かと思いました。
「たちばな」煉切製:いづみや
白い煉切で小豆こし餡を包みまるめ、手技でたちばなの花をかたどり、朱色の羊羹の実と緑の煉切の葉を配したお菓子です。
このお菓子のポイントは、いづみや三代目オーナー三堀純一氏が考案した特殊な道具を使い、さじ切りならぬ「針切り」という手法で刻まれる花びらのシャープな造形です。
シベの部分も、白と薄黄色のみじん粉を丁寧に付けて表現していて、本物のたちばなの花と比較すると、その完成度の高さがよくわかりますね。
「桃の花(もものはな)」きんとん製:いづみや
ピンクと白の二色のきめの細やかなそぼろを白こし餡のまわりに植え付け、煉切製の桃の花を添えたお菓子です。
糸のように細やかなそぼろが圧巻ですね。
そぼろ作成用のふるい(そぼろ漉し)には、竹製や金属製の他に馬の毛を使って作られた「毛篩(けぶるい)」があります。
きめの粗い太めのそぼろは、竹製や金属製ふるいで漉し出しますが、このお菓子のように、きめ細やかな繊細なそぼろを作るときには毛篩が欠かせません。
金属製のものは漉す時に素材の中の繊維が切れてしまい、漉した後のそぼろに繊維が混じってしまいますが、馬の毛はその弾力で繊維を押し返すので、繊維が混ざらず、とても口当たりの良いそぼろができます。
また、天然の毛には細かいキューティクルの凹凸があるので、同じ目の他の材質のものよりもそぼろの粒子をさらに細かくできます。
そして、何より素材に金気をうつさず、本来の風味を損ねないという利点があるのです。
上生菓子作りに欠かせない道具ひとつとっても、いろいろな創意工夫があり、知れば知るほどその奥深さに驚かされますね。
上生菓子の美しさや美味しさは、このような無数のこだわりの積み重ねの上に成り立っているんですね!