私が敬愛してやまない「一炉庵」さんを紹介します。
一炉庵さんは創業明治36年 (1903年)という、100年以上続く東京都文京区の老舗です。
特に上生菓子に主力を注いでいて、約二週間ごとに15〜20種類もの上生が作られ、年間400種類以上の意匠を取りそろえています。
かつてこのお店の裏手に夏目漱石が住んでいて、甘党の漱石は、ここのお菓子が大のお気に入りだったそうです。
また、一説によると、一炉庵さんの飼い猫が漱石宅に迷い込み、例の『我輩は猫である』が生まれたともいわれています。
この小説にちなんだ「猫のひとりごと」という焼き菓子もあり、店内には漱石直筆の書も飾られています。
甘党の漱石が足しげく通い、よく買っていたというのが、この「みそまん」です。
「みそまん」小麦饅頭製:一炉庵
味噌を混ぜた小麦粉生地で小豆こし餡を包み俵形にまるめ蒸し上げ、「みそまん」の焼印を押したお菓子です。
味噌の懐かしい香りと、風味豊かなこし餡がうまく調和した感慨深い逸品です。
今日は、一炉庵さんの匠の技が堪能できる、迎春の上生菓子をお楽しみ下さい。
「丹頂(たんちょう)」煉切製
本紅で染めた鮮やかな背景に真っ白な丹頂鶴が浮き立つように映えています。中は小豆こし餡。
「初日(はつひ)」煉切製
勢いのある波頭の上に昇る初日を精巧な木型で押し抜いたお菓子です。中は小豆こし餡。
「門松(かどまつ)」煉切製
不老不死の象徴である松の葉をかたどった木型で押し抜いたおめでたいお菓子です。抹茶煉切。
「羽子板(はごいた)」羊羹製
梅羊羹の上にピンク色の煉切を張り合わせ、羽子板の形に抜き、羽根をあしらったお菓子です。
「若竹(わかたけ)」煉切製
まっすぐな性質が尊ばれる竹を写した木型で押し抜き、羊羹製の葉を添えたお菓子です。中は小豆こし餡。
「干支・申(えと・さる)」煉切製
猿の顔をかたどった木型で押し抜いたお菓子です。中は小豆こし餡。