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冬華(山種美術館)

 

山種美術館に併設された「カフェ椿」で提供されているオリジナル和菓子を紹介するシリーズです。 

 

幕末から明治時代にかけて活躍した日本画家、田能村直入(たのむらちょくにゅう)の《百花》が今日のお菓子のモチーフです。 

 

(出典:https://twitter.com/yamatanemuseum/status/321461074727690240) 

 

上の絵はほんの一部分で、実物は全長約3mの長い巻物に春夏秋冬の草花が百種類も描かれています。巻末に細かい文字がびっしり並んでいるのは、漢名で記された全花名です。 

 

この膨大な種類の花の中から今の季節に合わせ、冬の花の部分をお菓子で表現したものがこちらです。 

 

「冬華(ふゆはな)」煉切製:菊家 

白い煉切で小豆こし餡を包み直方体に形づくり、上面に千筋をつけます。その上に淡雪羹・羊羹・煉切・錦玉・そぼろなどいろいろな素材を駆使して作った冬の花を配したお菓子です。 

 

こういう精密な描写は菊家さんの御家芸ですね。

 

それぞれの花をひとつひとつ見てみましょう。

 

まず左端の淡雪羹製の白い花と羊羹製の葉で作った花は水仙と思われます。 

 

中央の赤と黄色の煉切製の花は山茶花あるいは椿でしょう。 

 

右上の黄色いそぼろで写した花はツワブキでしょうか? 

 

右下の錦玉製の青い花は寒咲あやめのように見えます。 

 

四季折々の花が画面一杯に描かれた植物図巻のような原作の雰囲気を小さなお菓子の中に見事に写しとっていますね。 

 

それぞれの花をすべて違った素材、製法で描いたのも「百花」の多様性に通じるものがあります。 

 

さすが、渾身の逸品ですね!