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葛の花(オリジナル)

 

秋の七草シリーズ、3回目は「葛花(くずはな)」です。 

 

葛粉で作られた上生菓子は数えきれないほどありますが、葛の花を写したお菓子ということになると、ほとんどありません。 

 

その特徴的な花姿はお菓子でも表現しやすそうなのですが、七草を描いたお菓子の中では一番少なく、コレクター泣かせの花ですね。 

 

過去に「ちもと」さんと「鶴屋八幡」さんのものを紹介しました。

 

「葛の花(くずのはな)」きんとん製:ちもと 

 

「葛の花(くずのはな)」きんとん製:鶴屋八幡 

 

 

いずれもきんとん製で似たような雰囲気のお菓子だったので、今年はガラリとイメージを変えて、きんとん以外の製法のものをなんとしてでも見つけ出そうと思いました。 

 

近隣の和菓子屋さんに問い合わせたり、ネット上でも相当時間をかけていろいろ探しましたが、残念ながら既製品のものでは、他にこれといったものは見つけることができませんでした。

 

そこで、最後の手段、行きつけのお店、大船にある「龍月」さんに特注で作ってもらうことにしました。

 

まずは、葛の花の写真を見ながらどんな意匠にするか、職人さんと綿密に打ち合わせです。

 

葛の花はこんな感じです。 

 

(出典:http://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/200308140000/) 

 

藤の花房を逆さにしたような形で、紅紫色の小さな花が穂のように集まって咲くのが特徴です。 

 

龍月さんの春の薯蕷饅頭に藤の花の焼印を押したものがあります。 

 

「藤じょうよまん(ふじじょうよまん)」薯蕷製:龍月 

 

「藤の花房を逆さにしたような形」というのをヒントにして、この焼印を上下逆にして葛の花に見立てて使うことにしました。 

 

この押し型を美しく引き出せる製法としては煉切か薯蕷が考えられます。 

 

薯蕷の場合は焼印となるので、花の部分が焦げ色(褐色)となり、美しい花色が生かしきれません。そこで、煉切で表現することにしました。 

 

生地の色は当初、葉に見立て全体を淡い緑色にする予定でしたが、いろいろ調べていると、葛の葉っぱの特徴として、葉の裏が白いというのがポイントであることがわかりました。

 

清少納言は枕草子の中で「葛の 風にふきかへされて 裏のいと白く見ゆるをかし」と述べています。 

 

また、守覚法親王の歌には「常よりも あはれは深し 秋暮れて 人も越す野や 葛の裏風」とあります。この「葛の裏風」というのは、葛の白い葉裏を見せて吹く風の事で、秋を表す風情のある季語にもなっているのです。 

 

こんなわけで、生地は葛の葉裏に見立て白をベースに、下方三分の一を緑色にぼかし染め葉表の色とし、花を型押しする中央部分を赤紫色に染めることにしました。白い背景の方が、花色もさらによく映え、一石二鳥です。 

 

最後に、藤の花の型を上下逆にして押し、仕上げに赤紫色のみじん粉を散らします。 

 

完成予想図はこんな感じになります。 

 

 

理想としては花を二房にしてより豪華にしたかったのですが、予算の都合で今回はあえなく一房のみとなりました。 

 

あとは二週間後の完成を楽しみに待つのみです。 

 

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ジャジャーン、ついに出来上がりました!

 

「葛の花(くずのはな)」煉切製:龍月/上生菓子図鑑 

 

花色が予想より青っぽく見えるのが残念です。もう少し赤みの強い紫色が理想でした。 

 

みじん粉の量が多いと、型押しの輪郭が隠れてしまうので、みじん粉をかけないバージョンも作ってみました。

 

 

こちらの方が押し型がよく浮きたって見え、すっきりしたイメージですね。

 

このお菓子、上下を逆にすると、そのまま藤の花としても使えそうです。

 

 

「葛藤」という言葉がありますが、まさに「葛」と「藤」は表裏一体の関係にあることが、このお菓子からもわかります(笑)

 

今回は、職場のパーティー用に20個オーダーしましたが、ひとつひとつよく見るとみんな花の表情が異なっているのが面白いですよね。 

 

 

型押しの深さ、みじん粉の散らし方、染色の位置や範囲などがすべて微妙に異なり、手作りならではの味わいが楽しめます。 

 

職人さんと一緒に創り上げた、世界にひとつだけのお菓子はやはり格別ですね (^◇^)/