「野すみれ(のすみれ)」きんとん製:豊島屋
すみれは園芸用として庭に植えられることもありますが、基本的には素朴な雑草のひとつです。
か弱そうなイメージですが、アスファルトの割れ目や歩道縁石の間など、ちょとした隙間があればどこにでも生えてくる生命力の強い花なのです。
すみれは、昔から詩や文学などにも数限りなく登場し、歌に歌われ、また、女性の名前として用いられたりと、これほどみんなに愛されている雑草は、ほかに無いかもしれませんね。
何年か前、すっかり春めいたある日に蒜山(ひるぜん)高原を散策したことがありました。
新緑の山道を峠に向かって登っていましたが、普段の運動不足がたたって息がきれてしまい、ちょっと木影でひと休みしようとした時、ふと足元に目をやると、なんと、凛としてすがすがしい野すみれの花が咲き群れていたのです。
その姿の何とゆかしかったことか!園芸用に育てられたものにはみられない、芯の強さを持ちつつ、純粋で無垢な乙女のようなその姿に、いっぺんで疲れが吹き飛んだ覚えがあります。