· 

乙女椿(栗山)

「乙女椿(おとめつばき)」煉切製:栗山 

 

乙女椿は椿の一種で、特徴は千重咲きといって、花弁が多く重なって咲き、花芯がありません。花の色は淡いピンク色が多いですが白色もあります。

 

栗山さんの乙女椿は、立派な花芯がついているし、花弁も多くなく、実際の乙女椿とは似ても似つかないですね。 

 

 

乙女椿は江戸時代からある園芸種で、あまりにも美しい椿なので、他の藩や他家に持ち出すのを禁止 したため、「お止めの椿」と呼ばれ、それが転じて「乙女椿」に変わったという説があります。

 

 

私が生まれ育った瀬戸内地方に、この乙女椿にまつわる悲しい伝説があります。

 

広島県の呉市に伝わる伝説です。

 

 

昔、宮原の集落に長者がいました。 

その長者には椿のような美しい娘がいました。 

長者は娘をとても可愛がり、娘を美しく着飾っては目を細くしていました。 

その娘が年ごろになると、長者は金のわらじをはき、金の太鼓で三国一のお婿さんを探しまわったのです。 

ところが、その大事な娘が、よりによって集落で一番貧しい漁師の若者を一目見て恋に落ちてしまいました。 

わが愛しい娘が、その若者を慕っている事を知った長者は大反対したのです。 

ついに長者は娘を一室に閉じ込めた上、若者を呼び付けて、さんざんに悪態をつきました。その上、彼の売りに来る魚を買わないよう村人に言いつけました。 

将来を悲観した二人は嵐の吹き荒れる夜、ひそかに呉の海に漕ぎ出て、おたがいの体を固くしばりあって身を投げました。 

二人の屍は荒波にもまれて離れ離れになり、翌朝、若者の屍は遠く流れて呉沖の能美島(のうみじま)に、娘の屍はうちかえされて呉の浜辺に打ちあげられました。 

この悲恋の噂が消えたころ、能美島 と呉浦に、それぞれ一本づつの椿が芽を出し、見る見る成長して美しい花を一輪づつ咲かせました。 

誰言うとなく能美島の椿を雄椿、呉の浦のものを乙女椿と呼ぶようになりました。 

乙女椿の花は夜になると、怪しいまでに輝く青白い光を放ちました。それにこたえるかのように、能美島の雄椿も、暗闇の中にかすかな光を明滅させました。 

そして年を重ねていくにつれ、乙女椿の発する青白い怪しい光は、いよいよ輝きを増し、呉の沖を通る舟人の目印ともなったほどです。 

こうして年を降るうちに能美島の雄椿はいつとはなしに枯れてしまいました。しかし、呉の浦の乙女椿は見上げるほどの大木になり、たった一輪しかつけなかった真っ赤な花を二輪咲かせるようになりました。 

二人の身の上をいとおしんだ長者は、自分の仕打ちを悔い、この乙女椿のそばに立派な祠(ほこら)を建て、毎日お参りしては二人の霊を心より弔いました。 

(呉の民話より転載しました) 

 

まるで薔薇のように美しい乙女椿