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三千歳(とらや)

「三千歳(みちとせ)」羊羹製(白餡入り):とらや 

 

和菓子の名前、つまり「菓銘」には深い意味、背景があります。 

 

今日紹介する和菓子「三千歳」は、桃の花を表現したものです。

 

中国では古くから桃を仙果(仙人が食べる貴重な果物)とみなし、邪気をはらい不老長寿を与える果物として神聖視されてきました。 

 

桃といえば有名な西王母の伝説があります。

 

西王母(せいおうぼ)とは、 中国の神話に登場する最高位の女神。崑崙山(こんろんさん)という理想郷に住み、蟠桃園(ばんとうえん)という桃園の管理人をやっていました。

 

この桃園には3600本の桃の木があり、手前の1200本は三千年に一度だけ花が咲き、その実を食べると仙人になれ、真ん中の1200本は6000年に一度だけ花が咲き、その実を食べると不老不死になり、一番奥の1200本は9000年に一度だけ花が咲き、その実を食べると未来永久に生き続けられる、と言われていました。

 

この桃を、西王母の誕生日(なんと3月3日!)に、食べる慣わしになっていたといいます。 

 

また、漢の武帝が長寿を願っていることを聞いた西王母が7個の桃をたずさえ出向き、2個を自分が食べ、残りの5個を武帝に献上したという話もあります。

 

余談ですが、有名な孫悟空はこの蟠桃園の桃を盗み食いして、不老不死の身になりました! 

 

この伝説の中にある三千年に一度花が咲いて実を結ぶという不老長寿の桃の花を表現したのが、このとらやの「三千歳(みちとせ)」なのです。 

 

ぱっと見は、単に桃の花をかたどったお菓子というだけですが、「三千歳」という菓銘によって、その背景にこれだけ深い内容のものが付加されるのです。 

 

このお菓子は、天保11年(1840年)(江戸時代!)に発案されたお菓子とのこと。 

 

さすが「とらや」さん、どの上生菓子も歴史があって、深みがありますね! 

 

なんといっても室町時代に創業して500年近く続いている老舗、この桃の伝説に負けないくらい不老長寿の会社です。